2008 Fiscal Year Annual Research Report
ポルトガル語・スペイン語における名詞句構造の対照分析
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19520320
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 健 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (50292074)
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Keywords | スペイン語 / 関係節 / 統語論 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ポルトガル語・スペイン語両言語における名詞句に関わる現象を記述し、他のロマンス諸語の該当する言語事実と対比しながら、その特異性を理論的観点から明らかにすることにある。本年度の研究内容は、スペイン語の名詞句、特に名詞句において重要な位置を占める関係節の問題を集中的に扱った。スペイン語は様々な種類の関係詞を有する言語であり、その機能も多岐にわたって複雑である。本研究ではその中でも最も使用頻度が高く、機能も多い"que"を用いる関係詞について、その統語的特徴とそれが用いられる関係節の構造を分析した。具体的には"que"が単独で用いられる場合には空演算子が生起するのに対し、定冠詞と共に用いられる場合には演算子として機能するのは定冠詞であると分析した。また、両者の複雑な分布は統語的な原理だけでは解決できない問題であることを議論し、音韻的なフィルターを設定することによって解決されることを示した。なお、本研究の成果は21年中に刊行予定の論文集に掲載予定である。 上記の分析は、スペイン語の関係節構造のみならず、ポルトガル語をはじめとするロマンス諸語の当該現象を考察する上でも有益な視点を提供するものと言えよう。特に、定冠詞が生起する関係節構造は他のロマンス諸語にも観察されるものであり、スペイン語との相違点を考慮に入れることでそれぞれの言語における関係詞の個別の特徴が明らかにされよう。また、上記の研究成果は、名詞句における修飾構造に対する新しい理論的分析の可能性を提示したと自負するものである。
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