2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520321
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 大厚 Tohoku University, 大学院・国際文化研究科, 准教授 (00272021)
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Keywords | 省略現象 / 間接疑問省略 / 項省略 / 比較統語論 |
Research Abstract |
本研究は、自然言語に観察される間接疑問省略と項省略という二つの省略現象を比較統語論的に考察し、それらの言語間の変異の程度とその変異の根底となるパラメーターの解明を主たる目的とする。 平成19年度においては、間接疑問縮約に関しては、日本語の当該現象について文献調査や新しい言語事実の発掘を計画し、また項省略に関しては、研究代表者による目本語の当該現象についての研究をベースに射程を中国語やバスク語などに広げることを計画していた。 平成19年度の研究実績としては、間接疑問縮約に関しては十篇程度の主要な先行研究論文を吟味し、問題の所在や議論の在り方などの理解に努めた。特に、最近日本語の当該現象にも疑問詞の移動が関与していることを支持する議論を提示した論文が発表されていることが判明した。そこでの議論を精査することが次の課題である。また、残余句である疑問詞が助詞を伴うか否かや先行文に残余句の先行詞が顕在的に現れているか否かが当該現象を含む文の文法性に影響を与えることがわかった。当該事実の一般化が次の作業である。 また、項省略については、日本語と同様に空主語・空目的語を許す中国語とバスク語を考察し、それらの言語の空目的語は日本語のそれと同様の特徴を有するが、それらの空主語は日本語のそれと異なる特徴を示すことを見出した。さらに、やはり日本語と同様に空主語・空目的語を許す韓国語とモンゴル語も調査し、それらの空主語・空目的語は日本語のそれと同じ特徴を示すことも発見した。これらの言語間の差異の根本をどこに求めるかが重要な問題であるが、自由語順現象と何らかの相関があるという先行研究において提案された仮説が妥当であることを学会にて発表した。データーや理論的裏付けの精緻化が次の課題である。
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