2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520326
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
MIYAMOTO Edson・T University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 講師 (60335479)
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Keywords | 文理解 / 語順 / 日本語 / モーラ |
Research Abstract |
文を理解しようとしている時に、文中のどのような要素が負荷となるかを調べた。先行研究では、文中の二つの語の間に意味的な関係を作るには、隣接している語よりも、離れている語とのほうが難しいとされる。その距離に関しては、語数や談話における指示実体数を用いた数量化が有効であるとされているが、音声的な負荷についての実験結果は管見の限りこれまで報告がない。音声関係の情報が作業記憶に大きく影響するとの実験報告があり、文理解においても音声が負荷になる可能性がある。本研究では、距離の数量化にモーラ数が有効であるとの結果を報告する。日本語母語話者に「NP1ヲ・NP2ガ・動詞」のような文を読ませた。NP2の名詞にはモーラ数の多いもの(例:新作を繊細な構造の本棚のデザイナーが発表した)と少ないもの(例:新作を粗野な作りの椅子のデザイナーが発表した)を使用した。文字数、親密度、頻度、意味の自然さに優位差はなかったが、実験結果として読み時間に関わるものが二点明らかになった。(1)モーラ数の多いNP2の方が、モーラ数の少ないNP2より読み時間が長かった。これは、黙読時にも語の音声的な情報が抽出されているためであると考えられる。(2)「ヲ・ガ」と「ガ・ヲ」語順の文を比較したところ、語順とモーラ数の間に交互作用が見られた。この結果から、かき混ぜ文である「ヲ・ガ」語順を処理する際に作業記憶に負荷がかかり、その負荷にはモーラ数に基づく距離が関わっていると言える。
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