2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520329
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
長崎 郁 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (70401445)
|
Keywords | 記述言語学 / 危機言語 / コリマ・ユカギール語 / ロシア / シベリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、北東シベリアのコリマ川上流域で話されているコリマ・ユカギール語について、現地調査を含む資料の収集と分析を通じ、文法の記述を行うことである。本年度は、これまでに収集された談話資料の整理を進めながら、(1) 3種類の分詞(非定形動詞の一種で、je分詞、me分詞、1分詞と便宜的に呼ぶ)が関係節においてどのように使い分けられているか、(2) いわゆる名詞句外所有構文と呼ばれる所有表現として、この言語にどのようなタイプが認められるか、という二つのトピックについて研究を行った。どちらもこれまで十分に明らかにされていなかったトピックである。(1) に関しては、(a) 関係節構造の主名詞が関係節においてどのような統語/格役割を持っているか、(b)主名詞が主文の主語であるか否か、(c) 談話上、主名詞が定であるか否か、といった要因により分詞が使い分けられていることを明らかにした。(2) に関しては、この言語における名詞句外所有構文を、(a) 所有者が目的語となり、被所有者が場所格によって表されるもの、(b) 所有者と被所有者がどちらも目的語となるもの、(c) 所有者と被所有者がどちらも与格あるいは位格によって表されるもの、(d) 所有者がトピックとなり、被所有者が主語となるものに分類し、それぞれのタイプで可能な述部動詞の意味的特徴、所有者と被所有者との意味的関係、語順の特徴について明らかにした。談話資料の整理に関しては、英語でメタデータ/アノテーションを付与する作業、英訳とロシア語訳の作成を進めつつある。この作業は次年度も継続して行う予定である。また、ロシア、マガダン州マガダン市で2週間の現地調査を実施し、資料の収集とその理解のための歴史的背景に関する調査を行った。
|