Research Abstract |
本研究では,談話における超分節的要素の果たす役割を,イントネーションを中心に分析することが目的である.これを,東南アジアの3つの言語について,通言語的に対照研究を行うことにより,タイプの異なる言語での共通点と相違点を探り出すことができる.イントネーションに,どの言語でも通用する特徴があるのか否か,また,言語ごとに異なるイントネーションの型にはどのようなものがあるのか,という言語学的に基本的な問いに対する回答を出すことができる.インドネシア語,ビルマ語,タイ語についてそれぞれ,超分節的要素のうちのピッチについての研究を進めた. ビルマ語とタイ語は声調言語であるので声調がピッチに現れるが,声調以外の文の要素がどのようであるかを観察するためにもまず声調の現れ方を把握することが必要である.そのためビルマ語とタイ語では,それぞれの声調間の弁別的な特徴を抽出する作業を進めた.タイ語(4種類)とビルマ語(3種類)の両方で,声調を弁別するのにピッチがかなり重要な手がかりであること,しかし,ピッチ以外の要素が弁別に関わっている可能性があり,それらのうちひとつは持続時間の要素(あるピッチの値がどのくらい持続するかという要素も含めて),もうひとつは声質あるいは喉の緊張度(音響音声学的に計測は難しいが)である可能性が示唆された.本研究の結果から,声調は喉頭全体の動態として捉えるのが妥当であると考えられるので,そのような視点からの分析を今後進める予定である. 声調のピッチへの現れ方を踏まえて,タイ語とビルマ語の文の要素からのイントネーションへの反映について研究を進めた.また,声調やピッチアクセントといった,語のレベルからピッチに反映する要素を持たないインドネシア語も,この2言語と並行して文の要素からの分析研究を進めた.現在は,ニュートラルである文と,強調される部分を持つ文を用いて分析を進めている.
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