Research Abstract |
本研究の目的は,日本語と韓国語の非対称構造を構造化して描き出すための対照言語学的な基礎研究を行うことにある.非対称構造とは,言語の統辞論的,形態論的な構造を一定の単位に分節してみたとき,複数の言語間においてそれぞれが一対一的,平行的な対応を見せない構造をいう. 本年度は,とりわけ対照言語学の基礎理論の研究を行い,日本語と韓国語の言語事実のうち,非対称的な構造を見せる部分について重点的に記述し,それら言語事実のありようを踏まえて,理論的な総合を行った. 理論的な研究においては,<言語がいかに在るか>という観点から,(1)言語が実際に実現する言語場の問題,(2)<話されたことば>と<書かれたことば>の位相的な違いに関する問題,(3)文体としての<話しことば><書きことば>と言語の存在様式としての<話されたことば><書かれたことば>の峻別の問題,(4)言語として現れるもの/現れないものについての問題,(5)<省略>論の問題,(6)主語=述語文の問題などについて重点的な理論的追究を行った.こうした原理論的な問題の検討なくして,言語の対照研究はなしえないことも,本研究の重要な到達点である. 非対称的な言語事実については,(1) 形態音韻論と表記論の問題,(2)日本語の措定辞「だ」と韓国語の措定辞-itaおよび丁寧化のマーカー-yo/-iyoの違い,(3) 待遇法の問題,(4)引用構造の違い,などについて重点的な記述を行なった. 2008-2009年にかけて,朝鮮学会の学会誌『朝鮮学報』,雑誌『國文學』,韓国の培材大学校『韓国語教育研究』,研究書『韓国語教育論講座』第4巻,などに数編の論考の形式で成果を発表し,一部については韓国語学習書にも成果を盛り込んでいる.
|