2009 Fiscal Year Annual Research Report
清朝の言語政策と社会変動に係わる漢語の多層性に関する研究-公用語の脈流を視座に-
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19520333
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
藤田 益子 Niigata University, 国際センター, 准教授 (10284621)
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Keywords | 漢語 / 清朝 / 言語政策 / 外交交渉 / 北京官話 / 南京官話 / 欧文資料 / 正音 |
Research Abstract |
目的:17世紀から20世紀初期の満洲族統治下における民族、階級、地域間の言語交錯と公用語の関係を調査し、内包する脈流を視座に、清朝の言語政策及び社会変動に係わる漢語の多層性について明確にすることを目標とする。 計画:社会的動向と言語の関係によって、五つの段階に分け、研究を進めている。今年度は、第三段階として、「外交交渉のための公用語の必要性」と「南京官話・北京官話の対峙」に関わる問題について考察を進めた。清代の『語言自邇集』等の欧文資料の他、北京と南京の語彙を併記した九江書會『官話指南』、『官話類篇』等を活用し、南京と北京の官話対照表を作成した。目的は、南・北官話の特徴的な語彙の選定である。欧文資料は「文言白話混淆体」に注意し口語を中心に整理を行った。 概況:明末清初、外国からは南京官話が規範と見られていたが、アヘン戦争以降、外交交渉において北京官話が必要となり主流が北京官話へと移行する。この欧文官話資料の性質の違いを活用し、対照研究を行った。正音を官話と等しく見る考え方もあるが、「正音の語彙=官話」と結論付けることは出来ず、更に検討の必要性がある。また、『語言自邇集』「談論編」は、『清文指要』が元になったもので、更に同じ系統の版本として、『初学指南』、『三合語録』等も存在しているため、欧文官話資料と清文系資料との比較対照に拠って、北京官話資料と満漢合壁資料との相違を検証した。 手順と方法:(1)欧文資料は、主に『語言自邇集』以前の南京官話の資料とそれ以降の北京官話の資料で比較し南・北官話の対照表を作る。(2)『語言自邇集』の如く底本の経過が辿れる資料は底本と版本間の語彙対照表も作成する。 これにより、(1)南・北官話の口語の対比が広節囲で可能となる。更に特徴的な基準となる語彙の選定を行った。(2)同系資料の書き換えに拠って主要言語の変遷に添った変化を解析した。
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Research Products
(3 results)