2010 Fiscal Year Annual Research Report
中国西南部の民族文字の字形集合に関する情報理論的研究
Project/Area Number |
19520351
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
鹿島 英一 九州大学, 留学生センター, 教授 (20253700)
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Keywords | 〓〓音節文字 / 集合論 / 民族象形文字 / 非漢字系文字 |
Research Abstract |
本研究の目的は中国西南部の雲貴高原や周辺地域に分布する非漢字系の象形文字や固有の音節文字を対象に、情報理論的解析を試みて、定量的な面からその特徴を把握することである。そこで、初年度の規範彝(イ)文、次年度の納西東巴(トンパ)文字、前年度の水(スイ)書に続いて、高原北部の(雲南省)維西〓〓族自治県を中心に分布する人口が60万人程の〓〓(リス)族の間に、二十世紀初頭に突如として出現した固有の音節文字を主対象にして、資料収集と解析を実施した。尚、この文字は同時期にキリスト教布教用に現れたフレーザー系の老〓〓文や〓東北部の苗系の禄勤〓〓文とは異なる。 具体的には、創字者の凹士波(Ngual sseixbbo,漢人式名:汪忍波)の残した「識字課本」にある1286字を対象(の字形集合)とした。集合は漢字風や納西族の哥巴(ゲパ)文字風(漢字や哥巴文字や東巴文字を借源字にして変形した字形)と独自形が混在するもので、基本的には曾て研究代表者が(現代)漢字で開始し、前記の規範彝文、納西東巴(トンパ)文字、水書などで展開した方法論に倣って、集合論を展開した。先ずは、手書きで難解な異体字を同定する過程で、1286字を936字に絞った。また、この集合に関し(幾何学的)対称類型分布の一覧表を得た。結果は規範彝文(1164字)や東巴文字(1339字)とほぼ同じ傾向を示すことが判明した。即ち、左右対称(II型)と非対称(VIII型)で合わせて約九割(余)、またその内のII型が約三割前後、残りの対称型は合わせて約一割である。(但し、規範彝文は途中で字形が90°回転した事情が割り引いてある。)資料公開が近年で、研究書が殆ど無いため、936字の大半を占めると見える単体字から、複合字を厳密に分離することは今回は差し控えたが、前年報告の水書(467字中の464字が単体字)と同じ傾向の文字として理解できる。
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Research Products
(2 results)