Research Abstract |
研究3年目の本年度は,昨年度行った第一および第二言語獲得の実験を結果を分析検討し,聴覚的制約と調音的制約の性質およびそれがどのように獲得されるかを追究し,さらにそれら2種類の制約の観点から最適性理論の精緻化に努めた.当初,それぞれの制約を「必異の原則」と「聞こえの階層」の2つの観点から追究する予定であったが,本実験結果により,その2つに加え,他の制約もさに検討の対象とした.さらに,制約の獲得に関しては,「パラダイムの一貫性(Paradigm Uniformity)」,「間接的反証(Indirect Negative Evidence)」の役割の大きさと従来から提案されていた照合性制約の役割という3側面から検討した.実験は,日本語の形容詞,形容動詞に関して,語幹末の音節に着目した刺激を用いて行ったが,制約獲得の観点をさらに厳密に追究するため,今後モーラを基盤とした刺激作成や語幹末のみならず語幹全体の再検討をした上で刺激を再検討し,新たに実験を行う必要性が明らかにした.今後,日本語話者の子ども(第一言語獲得),英語話者で日本語習得者の大人(第二言語獲得)を比較検討する際の基準を明確にした.またそれらの実験結果および分析結果を踏まえ,最適性理論において,それらの制約と獲得の過程が理論的枠組みの中でいかに妥当性を持ち,説明でき得るかを明確にした. これらの成果は,大阪大学において行われた日本英語学会第27回大会のシンポジウム"Invariance and Variability in OT"において口頭発表し,「音声研究」第13巻2号や,The Proceedings of the Tenth Tokyo Conference on Psycholinguisticsなどの学会誌に掲載した.
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