2007 Fiscal Year Annual Research Report
言語コミュニケーションを支える規範と逸脱の認知語用論分析
Project/Area Number |
19520370
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
岡本 雅史 Tokyo University of Technology, 片柳研究所, 客員准教授 (30424310)
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Keywords | 認知語用論 / 語用論的主観性 / 潜在的人称構造 / シネクドキリンク / メトニミーリンク / レトリック |
Research Abstract |
平成19年度は当初の予定通り,(1)言語理解過程における規範性の役割と認知的アセスメントの解明,ならびに(2)規範と逸脱に基づくレトリックの認知語用論的分析,の2つのテーマに即した研究を中心的に行い,内外の学会や論文誌でその成果を報告した. 具体的に述べると,(1)に関しては語用論的含意を持つと考えられる発話と字義通りに理解される発話の違いを分析することによって,発話者は何らかの事態を認知し(=認知主体),聞き手に何らかの情報を伝えるべく言語化し(=情報伝達主体),その言語化した発話を通して何らかの行為を遂行し聞き手に影響を与える(=行為主体),という主体性・主観性の3つの次元の存在を明らかにした.そして発話事態に対して各次元に応じた認知的アセスメントを聞き手が用いることによって発話理解がなされることをモデル化し,シネクドキリンクとメトニミーリンクによる字義性と含意の説明を試みた.この成果は京都言語学コロキアム第4回年次大会にて報告され,さらに<潜在的人称構造>という独自の説明概念からそれを発展させたモデルとその応用可能性について動的システムの情報論研究会で報告された. また(2)については,メタファーと直喩の日英の実例の分析をもとに<意味論的主観性>と<語用論的主観性>という,従来存在しなかった新しい視点による説明を提出した.これは,ポーランドで開催された国際認知言語学会(ICLC2007)で報告され,日本語用論学会の論文集にその詳細な議論が掲載されることとなった. さらに,共同研究として人工物との円滑なコミュニケーションを実現するための認知モデルの設計にも関わった成果が国際ジャーナル(AI&Society)に採択され,研究代表者が提唱する「認知語用論」研究は工学的分野においても有效であることが示された.
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Research Products
(5 results)