2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520373
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
鈴木 孝明 Kyoto Sangyo University, 外国語学部, 准教授 (50329926)
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Keywords | 言語獲得 / 統語解析 / 日本語 / 語順 / 格 |
Research Abstract |
幼児を対象としたオンラインタスクによる日本語文理解実験を行なった。幼児の文理解においても成人母語話者と同様に「埋語と空所の依存関係」の効果や可逆性の効果が観られるかどうかをセルフペースト・リスニング法によって調査した。その結果、可逆性の効果は認められたが、「埋語と空所の依存関係」の効果は観察されなかった。また、幼児の文理解においても、動詞出現以前にリスニング速度の低下が観察されることから、成人と同様に即時的な処理が行なわれていることがわかった。ただし、動詞位置でのリスニング速度の低下も認められた。これは、単なるあふれ効果や要約効果である可能性も考えられるが、主要部位置で解析器が何らかの積極的な処理を行なっている可能性も考えられる。たとえば、可逆性に関連した意味役割の付与やその統合的な処理が、最終的にはこの位置で行なわれているかもしれない。また、幼児の場合は、名詞句に付与する格助詞そのものがリスニング速度に影響を及ぼすこともわかった。日本人の幼児を対象とした統語解析実験はこれまでほとんど行なわれたことがなく、本研究の結果は成人と幼児の言語運用能力の共通点と相違点を示す貴重な発見だと思われる。今後は、幼児と成人の差が解析器自体の違いを示しているのか、語用論的側面の違いによるものなのか、または文法知識の違いを反映した結果なのかを特定する必要があると思われる。その手始めとして、実験文を文脈の中で提示し、そこに現れる情報の流れがどのように幼児の統語解析に影響を及ぼすのかを調査するための実験を開始した。
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