2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520373
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
鈴木 孝明 Kyoto Sangyo University, 外国語学部, 准教授 (50329926)
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Keywords | 言語獲得 / 統語解析 / 日本語 / 語順 / 格 |
Research Abstract |
幼児と成人の統語解析に関する類似点と相違点を、日本語のかき混ぜ文理解を対象として分析した。これまでに行ったオンライン実験の結果から、幼児も成人同様に即時的な文処理を行っていることがわかった。これは、可逆文の理解では、第二名詞句の位置でリスニングスピードの遅延が見られたからである。しかしながら、この遅延の要因となっているのは、幼児の場合は可逆性のみによる効果であり、成人母語話者に見られた埋語と空所の依存関係による効果は認められなかった。その原因として、幼児の統語解析では、名詞句に付与する主格と対格に関して異なる処理負荷がかかっているのではないかと考え、第一名詞句において主格と対格が付与する名詞句の処理時間に大きな差がない被験者に焦点を当てた分析を行った。その結果、これらの幼児の統語解析には、成人と同じ埋語と空所の依存関係による効果があることがわかった。先行研究では、文処理に関する作業記憶の容量が、埋語と空所の依存関係の処理に関係していることが提案されているが、本研究は、これとは別に格助詞自体の処理コストに関する要因があることを明らかにした。これらの結果は、リスボンで行われたGALA 2009で発表し、ケンブリッジ大学出版から発行予定の予稿集に収録される。さらに、かき混ぜ文処理に関する幼児と成人の統語解析の特徴を探るため、上記と同じ文構造において情報構造が文理解にどのような影響を与えるのか調査する実験を行った。幼児を対象として、情報の新旧という要因に焦点を当てたオンライン実験を行った。この結果の一部は、「公開シンポジウム統語構造と文脈-言語認知脳科学の可能性-」において発表したが、今後さらに成人母語話者のデータを収集して幼児と成人の比較を行う予定である。
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