2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本語的発想と表現との関係に関する対照談話論的研究
Project/Area Number |
19520389
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
沖 裕子 信州大学, 人文学部, 教授 (30214034)
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Keywords | 国際研究者交流(韓国・中国) / 国際情報交換(韓国・中国) / 談話 / 対照談話論 / 場面意識 / 談話構造 / 談話表現 / 同時結節 |
Research Abstract |
研究最終年度にあたり、日本語的発想と表現との関係について、総合的な考察を行った。同時結節という談話観に拠り,作例談話資料という新たな観察方法を用いて,日本語依頼談話の結節法に焦点を絞り,〔事態〕{揚面意識}《構造》//表現//の4点から、発想と表現の関係について対照談話論的に明らかにした。発想とは,その言語共同体が有する社会的慣習のありかたであると定義すると,{揚面意識}《構造》//表現//の各結節単位それぞれにおいて、各言語共同体に固有の社会的慣習がみとめられた。この意味で、「日本語的発想と表現との関係」という考え方を改める必要があり、「談話における日本語的発想のありかた」という観点から各結節層の実態とそれらの関係を理論化する必要があることを明らかにしたことは成果の一つである。こうした観点から、日本語と、韓国語、中国語の依頼談話を対照させることで、次のような特徴を新たに指摘しえた。日本語の{依頼}談話は,相手に迷惑をかけて申し訳ないという場面意識(発話態度)に支えられ,相手に実現を期待する内容を、心情に即して間接的に表現しているところに特徴がある。これに対して、仲間内では心的距離を縮めることをよしとする韓国語話者の依頼談話は、より直截で遠慮がないため、韓国人からみると日本人はつまらないことでも必死になって頼むように見える。また、用件をはっきり述べることが丁寧だという規範意識をもつ中国語話者の依頼談話は、要求的性格を帯びているため、中国人からみると日本人の依頼談話は相手を諭しているように感じられる.これらの考察から、日本語接触場面における言語問題発生の要因の一つは、韓国語談話や中国語談話の発想のままに日本語で依頼談話を展開することにあることを指摘しえた。以上の成果は、沖裕子(研究代表者)、姜錫祐(韓国カトリック大学)、趙華敏(北京大学)、西尾純二(大阪府立大学)の共同研究を通じて明らかにしえたものである。
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Research Products
(7 results)