2007 Fiscal Year Annual Research Report
近世辞書の学際的・言葉生活史的研究のための基礎研究
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19520390
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
佐藤 貴裕 Gifu University, 教育学部, 准教授 (00196247)
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Keywords | 国語史 / 節用集 / 出版 / 辞書 / 書誌学 |
Research Abstract |
1.調査・研究内容本年度においては、次年度以降の研究の基盤を作るべく、基礎資料の調査・収集を主に行った。具体的には、近世通俗辞書の代表ともいうべき節用集を中心として書誌的・国語学的調査を実施した。特に、これまでの研究において手薄であった関西地方の大学図書館・公立図書館をはじめ、必ずしも規模の大きくないコレクションなどにも手を伸ばし、十全を期した(例、龍谷大学・岡崎市立図書館・国立国語研究所・天理大学・神宮文庫・岡山県立図書館・香川大学・大阪市立大学・東京女子大学・東海大学)。また、これらの図書館等で対象としたのは、近世節用集全般ということになるが、当該図書館にのみ所蔵されるような唯一性の高い資料を中心とすることとし、これに準じるものとして近世極初期(慶長・元和期)の節用集について重点的に調査を行った。 2.成果・重要性等上記のような調査により、東京女子大学蔵寛永六年本や、大阪市立大学蔵元禄三年本、岡山県立図書館蔵享保一〇年本など、これまで言及されることのなかった異本や、これまでに知られていなかった異本について初めて調査することができた。 近世極初期の諸本においては、易林本平井版節用集と呼ばれる刊本につき、一定量の異本調査を遂行することができ、それらを比較することを通じて、これまで極く一部の研究者のみが研究の必要性を説きながらも手を着けかねていた同版間の階層的な先後関係について一定の見通しをえることに成功した。また、寿閑本と呼ばれる異本にっき、易林本を的確に修訂していることが明らかになり、踏襲的・惰性的な刊行の少なくない近世節用集において特異なものと位置づけられた。
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