2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520399
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
堀畑 正臣 Kumamoto University, 教育学部, 教授 (30199559)
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Keywords | 古記録 / 記録語 / 記録語法 / 『後愚昧記』 / 「有御~(御~あり)」 / 「被下(下さる)」 / 『看聞日記』 / 「生涯」 |
Research Abstract |
平成21年度は『後愚昧記』(記録1361~1383年、筆者三條公忠、自筆本、刊本は大日本古記録全四巻)の記録語と記録語法の調査を行った。(1)『後愚昧記』の記録語としては「青侍、會釋、白地、邂逅、雅意、經廻、計會、遮而、左道、~式、時宜・時議、枝葉、生涯、參差、吹擧・推擧、題目、對揚、大略、一二、電覧、秘計、比興、不合期、以外、有若亡、与奪、牢籠、〓弱、和讒、和与」などが見えた。(2)唐代口語としては「向後(コウゴ)、大都(オオムネ)が見えたが、唐代口語は少なかった。(3)唐名としては「亞相、羽林、黄門、執柄、攝〓、大樹、大理、都護、左幕、右幕、武衛」などが見えた。(4)異名としては「回祿」「槐林」が見えた。(5)記録語法としては(1)「有御~(御~あり)」の「御~」の部分に「御對面、御沙汰、御祈念、御方違、御遊、御幸、御入棺、御座」の例がある。さらに「可有御~」の形で当為表現の「可」を伴っての使用に「御参、御覧、御結縁、御出京、御懃仕、御平癒、御許容、御向顔、御計、御察」などがあり、動詞性の比率が高まってきている。(2)「被下(くださる)」の目的語は「御引直衣」「御服」等の名詞と「御書」「勘例并牒状」「宣旨」「院宣」「勅裁」「勅書」「綸旨」「安堵」等の書状及び命令書系統の名詞類がある中に、書状の中に「察下され候へく候」(2例)や「可被察下候」が見えた。「察し・下さる」という「漢語サ変+補助動詞」と見れば、「下さる」の補助動詞の早い例であり、古記録の日記本文より書状の方万に「下さる」の補助動詞用法が先に出現する点で興味深い。室町前期の14世紀後半の『後愚昧記』は15世紀前半の「看聞日記」のように多様な記録語の出現はないが、着実に変化してきている。このほか、『看聞日記』調査も継続して行い、『看聞日記』の記録語「生涯」について論考をまとめた。
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