2009 Fiscal Year Annual Research Report
『哲学字彙』にみられる近代学術用語の現代日本語への定着過程の検証
Project/Area Number |
19520402
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Research Institution | Saitama Gakuen University |
Principal Investigator |
真田 治子 Saitama Gakuen University, 人間学部, 教授 (90406611)
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Keywords | 国語学 / 計量言語学 / 語彙論 / 哲学字彙 / 近代語研究 / 井上哲次郎 |
Research Abstract |
本研究は語彙の明治から現代に至る消長の過程を、明治期の学術用語集『哲学字彙』に収録された学術用語を資料として、主に計量語彙論の理論と手法によって明らかにすることを目的としている。今年度は主に下記について研究を行った。 (1) 『哲学字彙』稿本の発見 昨年度まで井上哲次郎の欧州留学中の日記及び留学後の日記87冊の調査を行っていたが、その内容の分析から井上と関連があるとみられた『哲学雑誌』の戦前の号700冊を6つの図書館で調査した。その結果、『哲学雑誌』に改定増補版『哲学字彙』(明治17年)に加筆した「稿本」が掲載され、それが英独仏和版『哲学字彙』(明治45年)の下地となったことがわかった。この成果に関しては「第266回近代語研究会」『日本近代語研究5』などで発表した。 (2) 改定増補版『哲学字彙』の明治24年版の発見 先行研究で改定増補版『哲学字彙』(明治17年)には複数の版種があることが指摘されていたが、『哲学雑誌』の広告を調査したところ、明治24年版が存在する可能性が高いことがわかった。この成果に関しては「第266回近代語研究会」『埼玉学園大学紀要』などで発表した。 (3) 日本語の計量的な分析手法の開発 学術用語が時間とともに伝播していく様相をS字カーブに近似させて分析するため、医学等ですでに実績のある多変量ロジスティック回帰分析を時系列の語彙データに適用する研究を昨年度に引き続き進めた。今年度は国立国語研究所の方言データを用いた成果について「第25回社会言語科学会研究大会」で講演を行った。このほか漢語の現代日本語への定着に関する諸問題や計量的な性質の分析手法についての研究成果を「国際計量言語学会(Qualico2009)」『Glottometrics vol. 19』『計量国語学事典』『Studies in Quantitative Linguistics』などで報告した。
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