2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520404
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
彦坂 佳宣 Ritsumeikan University, 文学部, 教授 (00111237)
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Keywords | 『方言文法全国地図』 / 語地理学的研究 / 文献方言学的研究 / 伝播類型 / 待遇表現 / 格助詞 / 推量表現 / 勧誘表現 |
Research Abstract |
『方言文法全国地図』に各地の過去の方言文献を対照させる形で文法事象の日本語史面を考察し、かつての中央語であった近畿地方からの伝播類型を求めようとしたものである。その背景として、中央語としての国語史が各地方言に影響を与える一方で、方言側に独自の趨勢もあり、これら各地方言をふくめた総体としての日本語の歴史を検討したいという立場である。 本年は予定通りの下の3.までに4.を加えて行った。 1. 待遇表現の述部、対称代名詞、文末詞事象の地理学的、国語史的な研究 2. 格助詞関係についての同様な研究 3. 推量表現についての同様な研究 4. 加えて東海・東山地方の勧誘表現 研究の予定であった過去表見、使役表現などには及ばなかった。 その成果は次のようである。 1.では国語史での主要事項が周圏論分布をなすものの、この待遇事象は都市部に主要形式の集中する模様、また一方で古い語彙が温存される傾向があった。待遇語彙が文法的に強制されるものでなく、随意の文体的な側面をもつことの現れであろう。この点で伝播類型の型として1型を設けるべきものと考える。 2.の格助詞についても綺麗な分布でなく、周圏論的な視点で解けない。この点はすでに指摘されている。私見によれば九州、東北・北陸はかつての国語史の知見で解けるが、やはり新たな視点が求められる。今後は1.も含めて、周圏的伝播以外の型の整理が必要と考えるに至った。 3.4.では研究対象地図の中で特に問題になる形式の多い東海・東山地方の文法事象を考察した。2つの事象を通して、日本語史上の当該地域の特色が「近畿からの影響が及ぶ東側の地域であり、一方で東国方言と対峙し、ここに国語史の古態的な形式が吹き溜まり状態で重層する」模様があることを考察した。 中部地方以西の西日本での方言周圏的な分布模様に対し、東日本は固有の分布模様をもつことがこの間の実証的な研究で明らかになってきたと感じている。 (なお、上の研究を含めた著書の用意のため、個別論文の成果は乏しい結果となった)
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Research Products
(1 results)