2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520412
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
岡崎 正男 Ibaraki University, 人文学部, 准教授 (30233315)
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Keywords | 詩 / 近代英語 / Emily Dickinson / 韻律構造 / 韻律的倒置 / 最適性理論 / インターフェイス |
Research Abstract |
平成19年度と平成20年度の2年間にわたり、Emily Dickinsonの韻律構造に関する記述を積み上げてきたが、その記述にもとづいて、最終年度の平成21年度には、最適性理論にもとづく理論化を試みた。具体的には、Emily Dickinsonの詩にみられる、(i)鋳型の弱音節に現れる強音節の分布、および(ii)韻律的倒置の分布、の特徴を、近代英語期のShakespeareをはじめとする他の詩人の詩における(i)と(ii)の分布と比較もしながら、記述した。その結果、とくに(ii)については、Emily Dickinsonの詩においては、初期近代英語期の詩における生起可能なすべて環境において生起する、というきわめて特異な分布をしていることが明らかになった。 以上の記述をもとにして、最適性理論の枠組みにおいて4種類の制約を提案し、Emily Dickinsonの詩においては、それらの制約の優先順位の変異により、個々の詩行の適格性が決定されていることを提案した。Emily Dikinsonの詩においては、個々の詩行ごとに制約の優先順位が違っていると考えられ、4種類の優先順位が想定される。そして、4種類の制約と4種類の優先順位を設定すると、いままで一般化を阻むものと想定されていたEmily Dikinsonの詩行は、無限に近いパターンがあるものではなく、4種類のパターンに還元できる可能性が大きいことが明らかになった。Emily Dickinsonの詩行が4種類の型に還元できる可能性が大きいという主張は、いままでの先行研究と比較すると、格段の一般性を捉えており、設定した制約が妥当である限り、英詩の韻律研究の進展に寄与するものであると考えられる。 上記の研究成果を、研究成果報告書(冊子)としてまとめた。(裏面11を参照)
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