2008 Fiscal Year Annual Research Report
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19520415
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
仁科 弘之 Saitama University, 教養学部, 教授 (20125777)
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Keywords | 意味モデル / 運動皮質 / 言語中枢 / 行為動詞 / 主語の特定性 / 述語の不特定性 / 動詞句内主語仮説 / 表層主語 |
Research Abstract |
最近、世界的にfMRIを活用した言語脳科学の実験的知見が大量に得られるようになり、理論言語学と、この非侵襲的探査によってえられる脳内の言語情報処理の手がかりの突き合わせが可能となってきた。このような背景をふまえて、本格的な生物学的言語学、特になかでもまだ未開拓の意味論分野の脳科学的研究の方法を探る機運がたかまり、この分野のキックオフ会議の一つとして、昨年9月にアムステルダム大主催の『生物意味論ワークショップ』がオランダのライデン大学で開催された。発表論文要旨は次の通りである。自らは運動を行わずに、運動する他者を見る観察者は、その本人の脳の運動前野において、口、手、足等を司る脳部位に発火活動があることが指摘されており、これをミラー・ニューロン系(MN)とよぶ。このような脳科学データを自然言語意味解釈理論構築に考慮する現実性が高まってくる可能性を議論した。論理式の評価は形式的モデルに基づいて行われる。行為動詞の意味解釈モデルを解釈者自体の身体であると仮定し、さらに動詞句内主語説を採用すると、脳データに矛盾しない運動動詞部分の意味解釈過程の記述が可能になる。つまり、文が与えられると、その解釈者は、主語は不定のままに保ちながら、行為動詞部分は自らの身体の運動感覚のシミュレーションをもちいて、その動詞意味の理解のために運動皮質も援用する(VP主語の段階時)。その運動をどの特定個人が行ったかについては、(主語が繰り上げられて、時制を命題が獲得し、その主語にも特定性が、必要な時には、要求されるようになると、)文の主語を理解する際には、通常のように脳内の言語中枢をもちいるという可能性である。しかし、表面構造主語が指示する個体の文意味理解への参入方法はまだ不明であり、主語解釈に特化した複数モデルにより得失を比較する必要がある。
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