2008 Fiscal Year Annual Research Report
欽定訳聖書を中心とする英訳聖書におけるメタファーの認知意味論的研究
Project/Area Number |
19520418
|
Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
橋本 功 Kansai Gaidai University, 外国語学部, 教授 (10022378)
|
Keywords | 聖書ヘブライ語 / 英訳聖書 / メタファ / 翻訳 / 認知言語学 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、旧約聖書原典のヘブライ語のメタファ比喩表現を抽出し、その構造を認知意味論の観点から分析した後、対応する英訳聖書のメタファ表現と比較・対照し、英訳聖書におけるメタファの構造を明らかにすることである。研究計画にしたがい、(1)古代ヘブライ語のメタファ表現の構造と、その英訳によって英訳聖書に出現した英語のメタファ表現の構造を分析し、(2)古代ヘブライ語のメタファ構造と、英訳によって英訳に出現したメタファ構造の異同、および、(3)翻訳の結果、原典とは異なるメタファ表現が英訳聖書に出現する原因と仕組みおよび変容の過程を考察した。 認知言語学において、メタファ表現は共時的な観点から分析する傾向が強く、通時的かつ異文化的観点からの分析は少ない。本研究課題における考察の視点は、メタファ研究に新しいデータを与える。 研究計画に基づいた分析と考察の結果次のことが明らかになった。古代パレスチナ地方の社会と文化および気候・風土の中で生まれたメタファ表現のなかには、固有の香りを強く反映し、そのままの表現構造では英語文化に受け入れられないメタファがあることが明らかになった。初期の英訳聖書では、その意味が解明されていなかったために、古代ヘブライ語のメタファが直訳されていることが多いが、近代になるにしたがって、パレスチナの香りを強く反映した古代ヘブライ語のメタファ表現の多くは、イギリス社会と文化に許容可能な表現に変容されていることが明らかになった。一方で、メタファは人間が共通に持つ概念化の手段の一つであるので、メタファの表現方法が異なっていてもメタファ構造そのものには普遍的な側面が強いことも明らかになった。
|
Research Products
(2 results)