2007 Fiscal Year Annual Research Report
大規模コーパスを用いたメタファーの創造的概念形成メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
19520422
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大森 文子 Osaka University, 言語文化研究科, 准教授 (70213866)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 秀樹 大阪大学, 言語文化研究科, 准教授 (30191787)
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Keywords | 概念メタファー / コーパス / 慣用メタファー / 感情 / 聖書 / 物語 / 文化 / 視点 |
Research Abstract |
思考を司る概念メタファーを具現化する表現例を大規模コーパスから収集、分析することにより、抽象的概念領域を具体的概念領域からのメタファー写像により理解する人間の創造的概念形成メカニズムの解明を目指すという本研究課題を遂行するための基礎として、本年度は、現代英語1億語の大型コーパスBritish National Corpusを主たる調査対象とし、新聞コーパスThe Times Digital Archive 1785-1985や英訳聖書コーパスThe Bible in English(Chadwyck-Healey)を援用し研究した。論文「自然現象と感情のメタファー写像:"a flood of joy"型の表現をめぐって」および「感情に関するメタファーと写像の特性:"a flood of joy"型の表現をめぐって(2)」では、根源領域<自然現象>、目標領域<感情>に由来する2つの名詞句が前置詞ofで結びつく慣用メタファー表現例を収集、分析し、「感情カテゴリーにおけるプロトタイプ性を<水>という概念領域の観点から特徴づけることができる」、「感情を根源領域の欠如という観点から特徴づけることができる」など、従来の認知言語学研究にない新たな研究成果を得た。この成果は日本認知言語学会でも発表した。また、聖書由来の<善>や<悪>の概念を目標領域とし、<天体>や<動物>など自然界の事象を根源領域とするメタファー写像がサタンの堕落に関する物語の理解に果たす役割について、ミルトンの叙事詩テクストを対象に考察し、論文「メタファーのダイナミクスと視点:Paradise Lostの叙事詩的比喩をめぐって」として発表した。ここでも、自然界の事象に関する文化的理解に基づく「視点の移動」という観点からメタファー写像を特徴づけるという、新たなタイプの研究成果が得られた。
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