2007 Fiscal Year Annual Research Report
付帯状況の意味論:主体性との関わりから見た認知的構文研究
Project/Area Number |
19520423
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 准教授 (00263179)
|
Keywords | 懸垂分詞 / 主体化 / コーパス / 事態認知 |
Research Abstract |
英語における、分詞句の主語と主節の主語とが一致しない「懸垂分詞」表現について、コーパスによる調査を実施した。文頭に分詞句が来る事例をBNCコーパスから抽出し、その中から懸垂分詞表現であるものを確認しつつ手作業での収集を行った。その結果、この表現には(1)主節が現在時制であるか、もしくは状態動詞である場合が全体の8割を占めること、(2)分詞句には動作主性の高い事態がくる割合が多いこと、(3)構文全体としては、話者がその現場に立ち会っての臨場的報告という場面での使用に偏っていること、(4)話し言葉や講演など、話者が場面の舵取りを行うタイプのジャンルに多い表現であり、主観性を表すタイプの構文表現になっていること、が確認された。 懸垂分詞構文は、従来から「英語としてはふさわしくない表現」とされてきており、あまり積極的な研究対象になっては来なかった。しかし、文法家によるこのような評価にも関わらず、現在の英語でも散見される表現である理由は何か、については、あまり検討が成されてきてはいなかった。このため、その積極的な理由づけについて、「事態認知」という立場からの考察を行った本研究には、一定の意義が認められるものと思われる。更に、「事態認知」という観点を取り入れることで、他言語との比較が可能になった。日本語ではこの事態認知が自然であるため、懸垂分詞を「誤って」作文する学生が後を絶たないが、本研究成果により、その間違いが言語による「事態認知のデフォルトパターン」の違いに帰することができるので、教育現場への応用という意義も見いだせると考える。 この研究成果については2007年7月にポーランドにて開催された国際認知言語学会にて発表を行い、2008年には日本語論文の公刊が決定している。また英語論文化、国際雑誌投稿も準備中である。
|
Research Products
(1 results)