2008 Fiscal Year Annual Research Report
付帯状況の意味論:主体性との関わりから見た認知的構文研究
Project/Area Number |
19520423
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
早瀬 尚子 Osaka University, 言語文化研究科, 准教授 (00263179)
|
Keywords | 懸垂分詞構文 / 主体性 / 間主観性 / 視点 / プロトタイプ / 事態把握 / 付帯状況 |
Research Abstract |
英語分詞構文の中でも主語の一致しない懸垂分詞構文の認可条件について、認知言語学で議論されている主体性との関わりから考察を加え、その成果を論文としてまとめた。従来用いるべきではないとされてきた懸垂分詞構文が独自の構文的意味を持つことをコーパスによる分析から明らかにし、またその構文的意味が更なる対人機能としての用法を生み出していることを指摘して、その存在意義を明らかにした。特にコーパス事例を基に、懸垂分詞として用いられやすい事態がプロトタイプ構造を成していることを明らかにした。具体的には認識事態、次に仮想レベルでの移動事態、更に知覚事態が続き、いずれも具体的な状況ではなく概念レベルのメタ的、条件的な用法が圧倒的に多く用いられていることがわかった。懸垂分詞構文を学習者が積極的に用いることは推奨されていないが、その使用可能な状況を明らかにすることができ、言語教育にも貢献する結果が得られたと考えている。この結果については英語論文、日本語論文各一篇を投稿中である。また、日本語での対応表現である「〜と」との比較検討を類型論的見地から行い、日英で好まれる事態把握パターンがそれぞれ異なることから構文使用に差異が生まれることを検証しつつある。 懸垂分詞構文に加えて、もうひとつ付帯状況を表す形式としての<自動詞+形容詞>の組み合わせが持つ意味についても検討を行い、コーパス事例をもとにして「事態が状態を表すと解釈され、かつ主語の性質を主体的に捉えた場合」にこの統語形式が成立しやすくなることが明らかになった。この結果も日本語論文として投稿中である。
|