2007 Fiscal Year Annual Research Report
ミニマリストプログラムにおける英語の前置詞の統語的・意味的研究
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19520430
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Research Institution | Dokkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 英一 Dokkyo University, 外国語学部, 教授 (30004071)
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Keywords | 前置詞 / 前置詞句 / 複合前置詞 / 範疇選択 / 意味選択 / 従位接続詞 / 一般意味役割 / マクロ主題役 |
Research Abstract |
初年度の平成19年度には,英文法書・生成文法の研究書における前置詞と前置詞句に関する記述・説明を再検討するとともに,英語辞書や英語学辞典,さらに,Brown CorpusとLOB Corpusという言語データベースを活用し,前置詞と前置詞句の特徴の解明に着手した.前置詞は閉ざされたクラスを構成し,複合前置詞(as for,with regard toなど)を含めてもその数は限られているが,前置詞を主要部とする前置詞句はきわめて生産的で,列挙することは不可能なので,その特徴は一定の規則や原理などによってとらえなければならない. 前置詞と分類される語の多義性・多機能性を考慮し,(1)個々の前置詞の基本的な意味を捉え,(2)個々の前置詞に関する範疇選択(categorial selection)と意味選択(semantic selection)を詳細に検討する,という二つの方法によって,前置詞と前置詞句の特徴が解明できるという見通しを立てることができた. まず、範疇選択に関しては、前置詞は一般に名詞句を補部としてとり、文要素を補部としてとる場合は前置詞と同じ語であっても、それは接続詞と分類されるが従来の考え方であった。しかしながら、このような分析方法には難しい問題があり(鈴木英一『統語論』1990、開拓社)、また、このような分析が言語学的にどのような意味があるかも不明である。さらに、"from under the table"や"far from perfect"のような表現を考えると、前置詞の補部には名詞句だけでなく、他の前置詞句や形容詞句(さらに節要素)も可能である。従って、前置詞に関して範疇選択を詳細に研究することは前置詞句の特徴だけでなく、従属節の特徴を明らかにすることにも有意義である。 また、意味選択に関しては、選択関係を規定する意味概念としてより細かな概念を用いる方法とより大きな概念を用いる方法を検討した.その結果、Levin&Lappaport(2005)Argument Realizationにおける一般意味役割やKaga(2007)Thematic Structureにおけるマクロ主題役、また、Chomskyが提案している命題主題役のような、より大きな意味概念を用いる方法がより有効であることが明らかになった。
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