2010 Fiscal Year Annual Research Report
中英語頭韻詩韻律研究-繰り返しの技巧と定型表現としての連語
Project/Area Number |
19520433
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
守屋 靖代 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (50230165)
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Keywords | 英文学 / 英語史 / 中英語頭韻詩 / 口承様式 / 中世英語 |
Research Abstract |
今年度は研究休暇の年であったので、主にUniversity of London,Institute of English Studiesの研究員としてロンドンに滞在し、大英図書館及びロンドン大学図書館にて研究に集中することができた。国宝級の写本や稀覯本を所蔵する図書館での学びは、自分の研究に深みと広がりをもたらしただけでなく、ITの恩恵を受けて今までになかった研究方法や資料が使われるようになった英語史研究の現状をつぶさに見る好機であり、研究休暇が明けた後、授業や学生の論文指導に活用できる有益なものであった。また、セミナー、ワークショップ、大学院の授業や口頭試問等に参加させてもらい、今の英語学の動向に触れ、教授達と情報交換を図ることができた。11月にはアメリカに渡り、各地の図書館や学会で更なる資料を入手し、アメリカの英語史研究の最先端を垣間見ることができた。 最終年度の研究は次のように進めた。まず、昨年度上梓した「中英語頭韻詩の繰返し技巧と連語」で集積したデータベースおよび解明した韻律と連語の関係について、更に分析、統合を進めた。データベースは、3万余行を最終確認済みの状態まで完成させ、頻度による実例を鑑みつつ、頭韻の繰り返しによる遊びが英詩の伝統が形成されるなかでどのようにして文芸にまで高められていったか解明を試み、定型表現のように繰り返し登場する同一あるいは酷似した連語の成り立ちが、韻律の枠組みの中でどのように機能しているかを解明することができた。口承様式の定型表現を集め、音韻と統語の関係を明らかにし、個々の作品の特徴、作品間の差と全体に共通するテンプレートを明示することで、13世紀から15世紀のあいだに英語文芸活動が頭韻詩において表現しようとした繰り返し表現を解明し、言語変化を再構築することがこの研究の目的であった。その成果を一冊の著作にまとめ、6章分250頁程まで書き進めた。4年間の研究成果の集成となるはずである。
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