2009 Fiscal Year Annual Research Report
横浜ピジンのデータベース化とデータベースを用いた簡略日本語表現の研究
Project/Area Number |
19520441
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
KAISER Stefan University of Tsukuba, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (20260466)
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Keywords | 横浜ピジン / データベース化 / 簡略日本語 |
Research Abstract |
本年度には、まず『初期日本英学資料集成』(マイクロフィルム、34リール)におさめられている関係資料(特に、単語・会話・文字を扱った日本人による当時の版本など)のデータの検討を行い、すでにデータベース化してあった英語文献との比較により横浜ピジンと思われるデータを追加する作業を実施した。ただ、期待したほどの成果はなく、こうした会話書などはほとんど英語語彙からなることが判明した。唯一、『日本外国独通詞』巻末に、「日本詞にて異人へ通ずるつかひよふ」13の語彙があり、日本語訳もついていることもあって、英語文献と共通であることが確認できた。一例をあげると、「いつでもあいさつをヲハヨヲ」という具合である。 本年度の主たる課題になっていた、横浜ピジン・簡略日本語の性格の分析では以下のようなことを明らかにすることができた。 1日本語の発音を簡略にしている。11項目の中から、数例あげる(「:」は長音を表す)。 単音→長音(ooshee(牛)など)、子音+/ui/→子音+/i:/(worry(悪い))など、促音→直音(長音)(coachy(こっち)など)、拗音→非拗音(high yackoo(百)など)。 2語彙の多くが多義である(スラッシュはスペリングのバリエーションを区別;括弧内は(英語で示されている意味の数) Abnai/ah booneye(2)、Aboorah(5)、Acheera sto(3)、Aligatou's/allegato(2)、Arimasu(10)、など。換言すれば、それだけ少ない語彙でまかなうことができている(データベースの項目は300ほどである)。 3ほかにもいろいろな特徴(いろいろなピジン語で分析されている特徴と共通しているものが中心)の中で、以下のような条件法の表現が注目される。Nanny sto hanash, watarkshee boto piggy(何人話私ボートペけ=誰か聞いたら、ボートで出かけた[といってくれ])。これは日本人の記述した資料、『横浜繁盛記』の中でも次の例で確認できる。「(洋客)アナタヤスイ。ワタクシカウ。アナタタカイ。ワタクシペケペケ。」英語のピジンで見られる「No money, no come」と類似した表現である。
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