Research Abstract |
本研究の目的は,日本語学習者にとって習得が困難だとされる日本語特殊拍(長音・促音・撥音)を学習者がどのように知覚・生成しているか縦断的に調査し,習得プロセスを解明することである。 日本語学習者は「正確で自然な発音を習得したい,日本人とスムーズにコミュニケーションを行いたいが,発音が不自然であるために,日本人とのコミュニケーションに弊害がある」と感じている(戸田2003)。特に「おばさん」「おばあさん」,などの特殊拍の有無は,日本語学習者の母語を問わず,共通して難しいことが知られている(助川1993)。Pienemann (1984,1989)は,第二言語の自然習得順序に合わせた教育が効果的であると述べているが,日本語特殊拍の習得は単語の音節位置や子音種,ピッチなどに関係があるということがわかってきているものの(皆川1997小熊2000,2001他),習得順序が十分に明らかになっているとは言い難い。また,これまでの先行研究の大半は横断研究であり,縦断研究はほとんど行われてきていない。習得には個人要因が大きく関わっており(Ellis 1994),習得プロセスの解明には同じ学習者を縦断的に観察していく手法の研究が不可欠である。以上の点から,縦断的に日本語特殊拍の習得プロセスの解明を試みた本研究は意義あるものだと考える。 具体的には,国内外の韓国人日本語学習者を対象に以下の6点の解明を試みた。1.日本語特殊拍のリズム習得プロセス,2.日本語学習者の母語のリズムと日本語のリズムの相違点,3.日本語特殊拍における知覚と生成の関係,4.第二言語としてのリズム計測法の検討,5.習得に影響する個人的要因(インプットの量,学習ストラテジー,学習スタイルなど)である。平成20年度はデータ収集及びデータ分析を行い,学会(5件),研究会(1件),学問雑誌(1件)で研究成果を発表した。
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