2010 Fiscal Year Annual Research Report
「リスニングストレス」の理解阻害効果の解明とその対処方略の開発に関する基礎的研究
Project/Area Number |
19520473
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
野呂 徳治 弘前大学, 教育学部, 准教授 (90344580)
|
Keywords | リスニング / ストレス / 不安 / 理解阻害効果 / 対処方略 / 英語 / 第二言語習得 / 外国語教育 |
Research Abstract |
本研究は,従来,第二言語/外国語のリスニングにおいて学習者要因の一つとして認められていた「リスニング不安」に代わる情意変数として筆者が心理的ストレス理論を援用して概念構成をおこなった「リスニングストレス」の生起のメカニズムを理論的枠組みとし,外国語としての英語のリスニングにおけるその理解阻害効果を明らかにし,その対処方略の開発を試みようとするものである。 研究最終年度である平成22年度は,リスニングストレスに対する指導可能なストラテジーの開発のための基礎資料を得ることを目的として,学習者が意識的あるいは無意識的に用いていると考えられるリスニングストレス対処方略の特定と,その内在化プロセスの解明に取り組んだ。英語圏に8ヶ月~1年間留学した経験のある日本人大学生及び英語圏に1年以上滞在中の日本人大学生を対象にリスニング困難,リスニングストレスの経験,ストレス対処方略についてアンケート調査及び面接調査を行い,それぞれの回答の内容分析を試みた。その結果,リスニング困難時に用いる「問題中心の対処方略」としては「明確化要求」と「予測・推測」が最も頻繁に用いられているものであることがわかった。また,「情動中心の対処方略」としては「要求水準を下げる」と「リスニングに対する考え方を変える」の2つが重要な方略として浮かび上がってきた。さらに,調査協力者はこれらの方略を,他者を見てまねる学習である「モデリング」及び体験から試行錯誤的に学ぶ「体験的学習」を通して内在化を図っていること,また,その内在化プロセスにおいては,「ソーシャルサポート」,「学習者としての自己分析」,「外国語学習への目的意識」が規定要因として働いていることが推察された。これらの知見は,リスニングストレスに対する指導可能なストラテジーの開発にあたって,特に,ストレスマネジメントに基づく理論構築の可能性を示す有益な基礎資料となると考えられる。
|
Research Products
(1 results)