2008 Fiscal Year Annual Research Report
視覚障害者英語学習における認知リソース配分と情報保障機器活用
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19520478
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
加藤 宏 Tsukuba University of Technology, 障害者高等教育研究支援センター, 教授 (50177466)
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Keywords | 視覚障害 / 英語学習 / 情報保障 / 合成音声 / 認知負荷 / 点字 |
Research Abstract |
本研究は視覚障害のある英語学習者に音声合成や点字ディスプレイなどの情報保障技術を用いて、視覚障害者の学習特性や認知特性に適合した学習環境を提供し、視覚障害者の自立的英語学習を促進するための学習環境の特性を分析するものである。視覚障害者の英語学習の情報保障に音声合成や拡大表示・点字ディスプレイを補助として使用することで学習効率を上げてきた。特に合成音声が学習支援に有効あることを英語学習関係の国際学会等でも発表してきた。しかし、視覚障害者の場合、音声合成による学習では通常のリーディングが学習形態としてはリスニングとなる。これにより学習時の認知的負荷の差異が成績に影響を及ぼすことが考えられる。音声提示による英文内容理解テストを行ったところ、点字使用者(触覚情報)は墨字使用者(視覚情報)に比べ、問題解決を継時的処理により行う傾向が強かった。点字触読の認知的負荷が高いためと考えられる。また課題特性として空間情報処理や数的処理,ストーリ展開の処理等を含むタスクでは成績低下が示された。成績低下要因を説明する概念のひとつには外国語未習熟による外国語副作用があると考えられる。また、点字使用者においてはリーディングが触覚によるため、視覚からの入力とは負荷も異なる。このような学習メディア・学習形態の認知負荷の差異は結果として情報保障技術の進歩が視覚障害者に点字離れを引き起こしている。学習者が合成音声に過度になれてしまい、点字メディアから離れてしまい点字による触読スキルの維持に障害をきたすという新たな課題も見えてきた。視覚障害学習者用に独自に開発した学習教材は順次サーバに蓄積した。今後は、これら教材をつかった自学自習のストラテジーの分析等さらなる追跡調査が必要である。
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