2007 Fiscal Year Annual Research Report
言語間におけるライティング能力 双向性モデルの構築
Project/Area Number |
19520492
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小林 ひろ江 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (50205481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
リナート キャロル 広島市立大学, 国際学部, 教授 (20195390)
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Keywords | レトリック / 転移 / 議論文 / 反論 / L2ライティング / L1ライティング / 日本語学習者 / テクスト構築 |
Research Abstract |
19年度は、研究実施計画にそってデータ収集と分析を試みた。一方、過去5年間にわたるこれまでの研究結果に基づき、L1(母語)とL2(第2言語)によるテキスト構築モデルを作成し、第二言語ライティング・シンポジウム国際学会で行った基調講演の中でそのモデルを発表した。19年度〜20年度の研究の目的の一つはこのモデルによってアメリカ人日本語学習者の作文構築を説明できるかどうかを検証することであった。 まずデータ収集に関し、基本的には前研究と同様の方法を採用し、14名のアメリカ人日本語学習者(目標は20名)から日本語と英語の作文を収集した。使用したトピック(1.老人と家族との同居の是非、2.早期外国語教育の是非)は前回の研究と同じであるが、インタビューデータについてはまずは詳細な質問を電子メールで全員に回答してもらい、アメリカ現地の大学に赴いた時に5名を直接インタビューした。同時に当該大学の日本語教育講師3名へのインタビューも行った。 現在までに収集したデータの主な分析の結果は以下の通りである。1)ディスコースの特徴についてL1からL2への転移はあるが、その反対のL2からL1への転移は見られなかった、2)日本語(L2)の学習活動「読む」から「書く」への転移が日本語作文に表れた。例えば、議論を少しづつ積み上げる「帰納的」な書き方、質問形を含む「序論」、将来への展望を含む「結論」、明確な意見を避け、ぼかす表現の使用などが観察された。つまり、「書く」訓練をあまり受けていない学生であったが日本語の読解教材に接することによって日本語文の特徴を掴んで作文に導入していることが明らかになった。暫定的な結果であるが、テキスト構築モデルの確認、特に、3つの主要素(知識のたくわえ、書き手の意思決定と選択、言語によるアウトプット)の相互関係の確認と共に、知識の蓄え(repertoire of knowledge)部分にL2リーディングへのexposureよってもライティング知識が獲得できるという新しい知見を獲得した。
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Research Products
(1 results)