2009 Fiscal Year Annual Research Report
ワーキングメモリ機能のシステムとして捉える言語学習機能-そのモデルの確立と実践-
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19520505
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
板垣 文彦 Asia University, 国際関係学部, 教授 (10203077)
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Keywords | ワーキング・メモリ / 語学学習 / 乱数生成 / シャドウイング / 適性処遇交互作用 |
Research Abstract |
1から10までの数をランダムに音声で生成させる乱数生成(RNG)課題はワーキングメモリ(WM)評価の課題であり、特に音声系列によって情報を表現する点で言語とその学習におけるWMの役割を検討するのに適している。これまでRNG課題に特化したWMモデルの精緻化を進めてきたが、個人の短期記容量の拡張に寄与する中央実行系機能の計測を試みた場合、そのコアとなる記憶容量(Focus of Attention)の個人差要因を分離できないことが難点であった。昨年の研究では、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)を用いた前頭葉機能の活性に関係する新たな分析から、音韻情報の更新に関わる自然数系列の下降系列の生成と表象空間の操作に関わる上昇系列の抑制傾向が分離されていたが、今年度は、それらの評価の組み合わせによって純粋な実行系機能を測定できるとするモデル化にこぎつけた。この評価はNIRSデータの再分析を実施した結果、前部帯状回(ACC)の活性に関連する前頭葉部位に相関のピークを示した。また、言語習得に関わる基礎研究としてはスペイン人と日本人被験者群それぞれの母語と英語によりRNG課題を実施したデータを用い、外国語の数表象を用いた場合に外部の音声情報が利用できなくなる機能不全の状況を生じることを確認した。 また、昨年の研究では学習時間の違いが大きく影響するTOEIC得点を語学学習の基礎能力と見なすことに問題があるとして、8ヶ月で集中的に中国語を学ぶコースの学生を対象に実行系機能の関与を検討してきたが、今年度データ数を増やすとともに、前述の新しい実行系機能評価の指標との関連を見いだした。これにより言語習得の訓練法としてのシャドウイング法の有効性とその改良点についての理論化が可能になった。並行して実施したシャドウイングの実践的教育では、学習意欲がありながら点数の上昇が認められなかった2名について、8ヶ月で約150点の成績上昇が見られた。。
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Research Products
(4 results)