Research Abstract |
本研究の主な目的は,第二言語習得,特に,日本語を第一言語とする話者の英語学習の過程について,光脳機能計測を用いた脳活動の観察に基づき,一定の解明を試みることである。 第二言語習得の面では,仮説の一つとして以下を検証する。すなわち,『第一言語と第二言語の習得過程には共通性が高く,第一言語習得で働いた仕組みが,第二言語についても(少なくとも部分的に)同様に機能する』と言えるかどうか。また,脳機能計測の面では,従来この種の研究でよく使用されているfMRI(機能的磁気共鳴画像法)ではなく,より安価で被験者の拘束が少ない光脳機能計測すなわちfNIRS(機能的近赤外分光法)を用いる。更に,得られたデータをそのまま用いるのではなく,ウェーブレット変換を用いた多重解像度解析法を適用することにより,不必要なノイズ成分や心拍などの脳活動に由来しないデータ成分を取り除き,より信頼性の高いデータを提出する。 具体的には,日本語を第一言語とする英語学習者を対象に,第一言語(日本語)および第二言語(英語)の文処理によって引き起される脳の賦活を観察し,その賦活部位・賦活程度等を比較し,どの程度同様であるかについて検討する。平成19年度の実施内容は以下の通りである。 平成19年度前半には,関連先行研究,特に,日本語話者の英語習得に関する,fMRI/fNIRS等の脳機能計測手法を用いた実験を伴う研究およびそれらを用いないオフライン実験を伴う心理言語学研究の調査・分析を行った。平成19年度後半には,調査資料の分析に基づき,まず,日本語話者の第一言語である日本語の文処理,特に,照応形を含む文処理を行っている際の光脳機能計測実験を,数回の予備実験として計画・実施し,得られたデータの解析を行った。これらの結果は,平成20年度に計画している本実験計画・実施に役立てる予定である。
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