2007 Fiscal Year Annual Research Report
DNA分析に基づくイチョウの伝播と伝説に関する研究
Project/Area Number |
19520542
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐藤 征弥 The University of Tokushima, 総合科学部, 准教授 (00274192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬田 勝哉 武蔵大学, 人文学部, 教授 (60061412)
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Keywords | イチョウ / DNA / 文化交流史 / 伝来 / 伝説 |
Research Abstract |
H19年度は、韓国に焦点を当てて、8月に韓国で14カ所17本の樹について葉の採取や調査を行うとともに、DNAタイプの解析と史料調査を進めた。 文献史料として大正2年に大日本山林会が刊行した『大日本老樹名木誌』とそれより少し遅れて大正8年に朝鮮総督府が刊行した『朝鮮巨樹老樹名木誌』を見いだし、両者に記されているイチョウの所在地や伝説を比較することにより、日本と朝鮮半島の相違点が次のように浮かび上がった。(1)朝鮮半島では、イチョウが学問や儒教と強く結びついている。孔子が弟子を教えた場所にイチョウがあったという伝説が韓国にはあり、それにならって学校にイチョウを植えたという記録が多い。日本では、儒教とイチョウの関係はみられず、仏教や神道と結びっいた伝説が多い。(2)朝鮮半島では巨樹の伝説や言い伝えの中に、木や枝葉を伐採すると、神罰を受ける、病に罹る、死に至る、といった崇りに関する話が日本よりかなり多い。(3)日本では乳信仰を持つイチョウが多数あるが、朝鮮にはほとんどみられない。 また、韓国のイチョウ巨樹26本のDNA分析を行った結果、日本と共通のタイプが7種類21本、中国と共通のタイプが1種類、韓国でのみ見られるタイプが4種類見いだされた。先行研究と本研究の結果を総合すると、日本と共通のタイプが8種類37本、中国と共通のタイプが1種類、韓国でのみ見られるタイプが5種類9本となった。地理的分布では、韓国でのみ見られるタイプは内陸部に多く見られるのに対し、日本と共通のタイプはソウルや木浦周辺などの韓国西部の港に近い場所で多く見られた。従ってソウルや木浦を介して韓国と日本、双方の間でイチョウの行き来があった可能性が考えられる。
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Research Products
(3 results)