Research Abstract |
本研究は,戦前期に仏教教団各派が実施してきた海外開教事業の実態を解明しようとするものである。更に,その実態解明を通し,海外移民たちの精神的拠り所として仏教の果たした役割を明らかにするとともに,宗教間の対話や異文化交流を考える上での手がかりをも提示できればと考えている。明治以降の仏教海外開教は,ハワイ,北米,南米,朝鮮,中国、台湾,南洋諸島や樺太、シベリアなど広い地域にわたって行われ,関係する資料は刊本だけでも膨大な量にのぼる。しかし,これら資料は一部が研究機関に分散されて保管されているほかは,宗派機関や現地の開教区事務所、別院、布教所,あるいは元開教使とその遺族らによって個人的に所蔵されている状況にある。一般には,その存在さえも知られていないものも多く,またこうした理由から資料が分散し,なかには散逸されつつあるものも少なくない。そこで,刊行された文献資料を中心に主要なものを収集し,仏教の海外開教事業の全貌を明らかにするとともに,収集した資料を資料集として刊行することを計画した次第である。研究活動の第一年目に当る平成19年度には,収集した資料を『仏教海外開教資料集成』ハワイ編(全6巻)として不二出版から刊行した。本資料集は,仏教教団の海外開教事業に関する研究の飛躍的進展に貢献することが予想されるとともに,仏教学や歴史学のみならず,異文化交流史,移民史,比較宗教学等の研究充実に大きな波及効果を及ぼすものと考えられる。また同時に,北米における開教に関する資料も大方の収集を終え,平成20年度には『仏教海外開教資料集成』北米編(全6巻)を刊行する計画である。
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