2008 Fiscal Year Annual Research Report
歴史資料による白神山地の景観と環境の変容に関する研究
Project/Area Number |
19520553
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
長谷川 成一 Hirosaki University, 人文学部, 教授 (20013287)
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Keywords | 世界自然遺産 / 白神山地 / 流木 / 尾太銅鉛山 / 津軽領 / 弘前藩 / ブナ林 / 秋田領 |
Research Abstract |
20年度の研究成果としては、下記のような点があげられる。 まず第1に、世界自然遺産の白神山地に関して、主に調査・収集・整理した史資料は、弘前藩庁日記御国日記、津軽領沢絵図・津軽沢名考、東北森林管理局青森事務所の津軽領内全域の森林をリストアップした沢名台帳などであった。これらの史資料に基づいて、18世紀後半から19世紀初頭に至る白神山地の森林相だけでなく、津軽領内全域のそれを復元することが可能となった。領内の山々に茂っていた樹木は、檜(アオモリヒバ)、杉、松、槻、サワラなどであり、これらは商品材木として藩財政に貴重な収入をもたらしたが、そのほかの樹木は、雑木として主に民衆の生活燃料に活用された。白神山地では、白神岳などを除いた標高の低い山地では、近世後期にはいると、商品材木はほとんど切り尽くされ、雑木が主体の山々に変貌したことを明らかにした。 次に18世紀の白神山地を挟んで、津軽領と秋田領の人々がどのような自然環境と向き合い、その中でいかなる生業を営んでいたのかを明らかにした。加えて尾太銅鉛山の稼行と森林景観の変容などについても、前近代という時期的な限定はあっても見通しを立てることができた。 3番目に弘前藩による白神山地の流木(ながしぎ。薪材を津軽領ではこのように称する)伐採のあり方の検討を通じて、同山地の林業経営と岩木川を通じた近世都市弘前のつながりが明確になった。また、近世津軽領で「天気不正」の風聞・伝承が近世後期に入ると、記録類に数多く認められる。それは、白神山地の青鹿岳付近(秋田藩領との境)に開坑した大滝又鉛山鉱山における鉛の採掘が原因の天気不正の風説であった。白神山地での人間の生業が領内の天気や穀物生産に大きな影響を与えたことを明らかにしたが、この点については、今後の白神研究の中でさらに追及すべき問題と考える。
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Research Products
(4 results)