2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520561
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
西澤 奈津子 (古瀬 奈津子) Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20164551)
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Keywords | 日本史 / 古代史 / 文書 / 官僚制 / 日唐比較 |
Research Abstract |
平成20年度においては、唐の上表文・奉表文について、敦煌書儀から史料を収集して整理・分析した。その際、活字本だけではなく、昨年度購入した敦煌文書の写真版『法蔵敦煌西域文献』を用いて、フランスのペリオ文書所収のものについては、文字の異同などを確認するように努めた。また、唐の上表文・奉表文の実例として、『文苑英華』所収のものを整理・分析した。表は、官人個人から皇帝に直接奉ずる文書で、令の規定では致仕や訴訟の上表と、皇帝行幸時の起居表、皇帝踐疏や元日、祥瑞出現時の賀表などがあった。実例から分類すると、謝表・賀表・凶礼慰哀奉慰表など礼儀的な性格の表と、奏事・論事・陳情などの表に二分される。表は唐初期には政治的な上申にも使用されたが、玄宗期以降、中書門下体制に移行すると政治的上申には奏状が使用されるようになった。しかし、唐代後半期にも、賀表や謝表など主に礼儀的な表は作成されつづけ、宋代の『司馬氏書儀』『慶元條法事類』には、「表(式)」「奏状(式)」の順序で規定されている。政務のための文書様式が政治機構の変化にともなって変化していくのに対して、表は、王朝交替を超えて、皇帝と官人の関係を理念的に表す文書様式として残っていったと考えられる。 一方、日本においては、8世紀には上表・奉表とも数が少ない。9世紀になると上表・奉表とも増加するが、日本では賀などの奉表は、百官もしくは公卿から天皇に奉ずるもので、官人個人で奉じた例はない。日本では、天皇が必要に応じて官人の意見を徴収したり、官人個人が天皇に意見を進上する制度が発達しなかった。それだけ、日本古代の官僚制は身分制的性格が強く、個々の官人の自立性は低かったと言うことができる。
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Research Products
(6 results)