2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520561
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
西澤 奈津子 (古瀬 奈津子) Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 教授 (20164551)
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Keywords | 日本史 / 古代史 / 文書 / 官僚制 / 日唐比較 |
Research Abstract |
平成21年度においては、唐の表・状・啓についての史料と日本の表・状・啓についての史料を収集・整理・分析することを継続し、日唐における表・状・啓について比較研究を試みた。唐の表・状・啓について、敦煌書儀および敦煌文書・吐魯番文書から収集して、初年度に購入した『法国国家図書館蔵敦煌西域文献』などの写真版などと文字の異同などを校訂するよう努めた。唐の表・状・啓については、『文苑英華』所収のものも併せて考察した。その結果、表・状・啓は唐初より存在するが、このうち表がもっとも公的性格が強く、状・啓には私的な書状も含まれ文書様式として複雑な性格を有すること、表は唐後半期にも作成され続け、状は皇帝宛の奏状以外にも上中書門下状なども現れることなどが明らかとなった。 一方、日本の表・状・啓については『続日本紀』以降のものを検討した。日本の文書様式は中国から受容したもので、表について日本では官人致仕や訴訟の上表規定は継受したが、儀制令関係の賀表は継受しなかった。日本でも9世紀以降立賀表を奉じることが盛んになるが、官人個人ではなく太政官や百官など組織が奉じる点が唐とは異なる。ここに、中国における皇帝と官人の関係と日本における天皇と官人の関係が示されていると考えられる。また、9世紀には上表や賀表の儀式次第が定められ、状が受容されて、唐とは異なる日本的な形で表・状は官人社会・貴族社会の中に定着していった。
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