2007 Fiscal Year Annual Research Report
平安時代における土地公証文書と所領安堵の前提的研究
Project/Area Number |
19520569
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
梅村 喬 Osaka University, 文学研究科, 教授 (80092998)
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Keywords | 土地公証制 / 安堵 / 法隆寺文書 / 在庁 / 国庁 / 作手 |
Research Abstract |
本年度は、平安時代の土地売買・譲渡・貸与・処分と公権の証明に関わる文書の収集と、国衙・在庁関係文書の調査・研究を進めた。前半期では、対象を法隆寺文書に絞り、1980年代に行われた「法隆寺昭和資財帳調査」の実績を踏まえて、中世にかけて各地に流出・散在した同寺文書の集成を目指し、全文書の掌握に努め、所期の成果を得ることができた。現状でほぼ8割程度を論文草稿としてまとめた。史料は主に「寺辺所領」に関わるものであるが、そのなかで土地移動の根底に、「作手」など下位の権利関係の変動があるとの見通しを得ることができた。また、後半期には、厳島神社文書、根津美術館所蔵文書、根岸文書、東文書(松尾社家文書)、内閣文庫所蔵文書などの理解を深めるため、補助者の協力も得て、東京大学史料編纂所と国立公文書館を中心に調査を行った。ここでは中世の安堵への見通しをつける目的で、国衙・在庁の支配権-とくに地方官職の補任が、地方に「職」の秩序を広め、それが後世の安堵という主従制度の基礎を形成するという通説的理解を踏まえて、国庁・在庁関係文書を、大きく国庁を主体とする下達文書と、権門・寺社・武家の発給文書の両面から追究する方法を採用して、鋭意、研究を進めた。ただ、対象とする文書は平安時代に限っても厖大であり、なお収集途上にあって次年度に調査と研究を継続する予定である。
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