2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世における開発と災害防止・復旧システムについての研究
Project/Area Number |
19520570
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
村田 路人 Osaka University, 文学研究科, 教授 (40144414)
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Keywords | 堤外地政策 / 貞享期畿内河川整備事業 / 川筋新田開発 / 流作 / 葭刈り捨て / 享保改革 |
Research Abstract |
今年度は、まず、前年度において原稿化していた近世淀川治水史についての著作を、『日本中リブレット93近世の淀川治水』として2009年4月に山川出版社より刊行した。 ついで、17世紀末~18世紀初における摂河治水政策の転換を、堤外地(堤防と堤防に挟まれた地)政策という観点かち検討した。前年度においては、同様の観点から、17世紀末までの摂河治水政策を検討したが、今年度の研究は、それをうけて行ったものである。具体的には、以下のことを明らかにした。 貞享期畿内河川整備事業(1684~87年)の中で幕府が打ち出した堤外地政策は、葭刈り捨て強制や流作禁止など、円滑な水の流れを阻害する原因を排除するというものであったが、これは、当時さかんになりつつあった新田開発の動同と矛盾する部分を含んでいた。そのため、幕府は早くも元禄6年(1693)に堤外地政策を変更し、流作を容認する。また、同11~12年の河村瑞賢らによる元禄期河川整備事業においては積極的な川筋新田開発が行われ、堤外地の開発を前提とした治水政策へと大きく転換した。宝永5年(1708)には、大坂町奉行の主導による摂津・河内の堤外地開発が行われた。これは貞享期以来の治水政策の基調をも否定しかねないものであり、ここに至って、幕府は開発優先主義的な治水政策に転換したといってよい。元禄6年に始まる幕府の堤外地開発政策は、享保改革の主要政策の一つであった全国的な新田開発政策に先行するものであった。 本研究は、従来ほとんど注目されていなかった堤外地政策という観点から摂津・河内の治水政策の変化を初めて明らかにした点、および、摂津・河内では、享保改革期に先行して幕府が積極的な開発推進策をとっていたことを明らかにした点に大きな意義がある。
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