2010 Fiscal Year Annual Research Report
環境歴史学からみた「森」と「原」「野」に関する研究-日本の古代・中世を中心に-
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19520587
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Research Institution | Beppu University |
Principal Investigator |
飯沼 賢司 別府大学, 文学部, 教授 (20176051)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅野 則子 別府大学, 文学部, 教授 (50299682)
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Keywords | 森 / 野 / 火 / 水 / 野焼き / 狩猟 / 歌 / 墓 |
Research Abstract |
本年度は、4年間継続してきた研究の最終年度であった。昨年秋に申請し採択されなかった研究公開促進費を本年度秋にも申請し、本研究の基礎史料となった永青文庫所蔵の『下野狩日記』上・下『下野狩旧記抜書』と阿蘇家所蔵の下野狩関係の近世史料を『阿蘇下野狩史料集』として公開することをめざした。その準備として、夏には、翻刻史料の確認と阿蘇家関係の史料の再確認を行った。2月初めには、原稿を印刷所に入れ、3月末に報告書を完成した。報告書には、『阿蘇下野狩史料集』の一部を掲載したが、4月に公開促進費が認められ、『阿蘇下野狩史料集』の刊行が実現できることになった。4年間の研究では、農村部と都市部に広がる「森」と「野」の比較をしながら史料的検討と現地調査を実施した。農村部としては阿蘇地域を対象にした。平成19年度から本格的に取り組んだ阿蘇下野狩の史料(永青文庫本『下野狩日記』『下野狩旧記抜書』)の翻刻作業とその現地調査は4年間で大きな成果を得て、中世阿蘇神社の神事体系における「下野」の「野」と「森」の存在の意義をほぼ明らかにでき報告書に掲載できた。 一方、京都などの古代・中世の都市周辺部に広がる「野」と「森」の役割、都市における機能との関係に注目し、紫野や嵯峨野の調査を実施した。例えば、鴨川を挟んで下賀茂社の「森」と「紫野」は存在し、対極の関係にあり、密接な役割をもつ。葬送(火葬地)や御霊会(やすらえ花)が行われ、野々宮としての齋院の御所がある紫野と「糺の森」(下賀茂の森)にはどのような役割が与えられているのだろうか。この点については、歴史学の面では、まだ十分成果を出し得ていないが、本研究の国文的アプローチでは、歌謡や散文にみられる「場」としての「野」や「森」、さらに、そこで歌われる「歌」の役割に注目して解明を進め、浅野氏の論考を本書に収録することができた。また、昨年調査した中国雲南省の鎮守の森の調査成果を若干報告書に盛り込むことができた。
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Research Products
(3 results)