2009 Fiscal Year Annual Research Report
古代西海道における出土文字資料の展開と地域性に関する研究
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19520588
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Research Institution | Miyazaki Sangyo-keiei University |
Principal Investigator |
柴田 博子 Miyazaki Sangyo-keiei University, 法学部, 教授 (20216013)
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Keywords | 出土文字資料 / 古代西海道 / 墨書土器 / 地域性 |
Research Abstract |
出土文字資料のなかでも本年度は特に木簡について多くの調査を行う機会を得て、その地域性を検討しうる可能性を見いだした。 岩手県奥州市道上遺跡とその出土木簡を実見したところ、この多面体の木簡は〓示札の一種で、杭に転用された状態で出土しており、使用状態・木簡の形状ともに鹿児島県薩摩川内市の京田遺跡出土告知札木簡と極めてよく似ていることを確認できた。京田遺跡は薩摩国府近辺にあり、道上遺跡は胆沢城の近郊に位置し、古代国家の支配領域の南端と北端で類似の木簡が出土していることには注目される。 さらに韓国扶余にて、韓国国内で出土している古代木簡の約半数を展示する企画があり、多数の木簡を実見して日本列島出土の木簡との相違を確認した。韓国の木簡には自然木に近い形状のものが比較的多く、道上遺跡や京田遺跡の杭状木簡の形状がこれらと類似していることは興味深く、今後さらに比較検討を続けていくことが課題である。 西海道諸国では、大宰府条坊跡出土の大型横材木簡、福岡市金武青木遺跡出土木簡等を実見し釈読した。前者は徴発の記録と思われる内容、後者は怡土城造営に関わると思われる内容で、いずれも大宰府管内支配の具体的なあり方を示す貴重な資料である。 また、日向国と薩摩国の地域において出土した墨書土器の個別集成を作成し、基礎的データを学界に提供した。
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