2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520594
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
橋本 道範 Lake Biwa Museum, 研究部, 主任学芸員 (10344342)
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Keywords | 環境史 / 中世史 / 内水面 / 漁撈 |
Research Abstract |
<I研究史整理>環境史に関する研究史整理の一環として、佐野静代氏の研究を取り上げ、幅広い視野に基づく業績を評価するとともに、研究史の理解や実証についての問題点を指摘した。その上で、環境史が「協業の装置」として有効であることを強調した。 <II内水面の環境と荘園制>陸域と水域とが不定期に可逆的に推移する「水辺」という環境が「河原」、「河辺」、「浜際」などとして認識されていたことを確認し、日本中世における支配・統合の地域単位であった領域型荘園は「水辺」という環境を前提として成立していたことを強調した。 また、吉井川下流左岸に展開した王家領備前国豊原庄と東大寺領南北条以下を取り上げ、「河成」という推移する水域の認定のシステムが構築されていたことや近世までに水路網が構築されていたことなどを明らかとした。 <III内水面の環境と漁撈>網野善彦氏の非農業民論と海民論について実証的な批判を行った。「河原」、「河辺」、「浜際」など「水辺」における漁撈の実態を追究し、網野氏が強調してきた海民による特権的な漁撈が一方的な主張に基づくいわばフィクションであり、現実の「水辺」では地頭御家人・荘官層から住人等まで様々な階層による異質な漁撈が競合しつつ併存していたことを明らかにした。特に、村落の生業と関わる重要な漁撈として、その日の生活のための小規模で素朴な漁撈があったことを断片的な史料からではあるが主張し、そうした小規模な漁撈も市場を前提とした可能性があることを推測した。
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