2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520594
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
橋本 道範 Lake Biwa Museum, 研究部, 主任学芸員 (10344342)
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Keywords | 中世史 / 環境史 / 内水面 / 琵琶湖 / 漁撈 / 消費 / 村落 |
Research Abstract |
本研究は、日本列島の内水面の中世的特質を究明して、そこにおける漁撈を中心とした生業の実態と展開を解明し、その上で、そうした環境を管理する主体としての村落の歴史的意義を考察することを目的としたものである。当該年度の成果は下記のとおりである。 1、河川流域の水域と陸域とが推移する環境に注目した展示を行った。洪水によって耕作不能となった土地は「河成」として認定されるが、その際、「捨田」という土地耕作権取り消しのシステムが存在したことを解明した。これは、堤防によって河道が固定化される近世以前の自然環境を前提とした支配のあり方を示すものとして重要である。 2、『賀茂社諸国神戸記』所収の中世前期の堅田漁撈について基礎資料を翻刻、紹介した。その上で、堅田の貢納、漁撈保障、漁法、漁業権について分析し、中世前期の堅田漁撈が決して自由な漁撈の特権を有していたわけではないこと、しかしながら、四季を通じた恒例・臨時の魚介類を下鴨神社に貢納していたことなどを論じた。これは、堅田台頭以前の琵琶湖漁撈の全体像を示す上で極めて重要な事実の指摘となると考える。 3、中世魚介類の消費(飲食や贈答・上納・下賜行為)に関する研究史を整理した。そして、現在の料理史研究が配膳様式の変化しか捉えていないことを批判するとともに、都市における嗜好にあわせた生産・流通の展開を捉えることの重要性を指摘した。従来、内水面の利用については漁撈の展開を軸に論及されてきたが、その展開が魚介類の消費動向に影響を受けたものである可能性は今後具体的に追究されなければならないと考える。 4、中世のフナ属の都市消費のあり方の変化が漁撈秩序の変化とどのように関わっているかについて考察した。これについては論考を執筆中である。
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