2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520599
|
Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡部 良子 Tokyo University of Foreign Studies, アジア・アフリカ言語文化研究所, 研究員 (10447500)
|
Keywords | イラン / イスラーム / ペルシア語 / ペルシア語文化圏 / モンゴル / 書記術 / 文書学 / 文書行政 |
Research Abstract |
本年度は、これまでに情報を蓄積してきた書記官僚のためのペルシア語書記術手引書から、その構成・言説パターンを抽出し、ペルシア語社会で継承されてきた書簡儀礼と文体・その理念の変遷を追うためのデータの蓄積に取り組んだ。特に着目したのは、ペルシア語書記術発展以前にペルシア語=イスラーム圏に影響を与えていたアラビア語書記術との比較、また、ペルシア語圏文化に様々な変化をもたらした13-14世紀モンゴル帝国文書行政の諸規範が、ペルシア語文書の形式・文体にいかなる影響を与えたかである。 また、アルメニア・グルジアへの海外調査を行い、現地研究者と会見してコーカサスにおけるペルシア語文化の影響に関し学んだ他、アルメニアのマテナラダン文書館でモンゴル支配期のモンゴル文書行政の様式を反映したペルシア語文書を調査した。 これらの研究成果の一部は、口頭発表で発表した。 この他、書記術手引書を含む文献にしばしば関連作品として収録される、書記官僚による宮廷文学作品の小品を新たに2点発見し、その校訂を試みた。これらの作品は、書簡術・文章術が密接に結びついた王権や支配の正統性の表象のありかたを如実に示すものであり、ペルシア語文化圏における文学・言語と権力の関係を明らかにする上で貴重な史料である。 書簡儀礼に関するデータ蓄積および書記官僚文学の研究は、最終年度にあたる次年度に継続し、最終的な成果としてまとめる予定である。
|