2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520600
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
澁谷 由里 University of Toyama, 人文学部, 准教授 (80283050)
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Keywords | 「満洲国」 / 戦犯 / 張作霖 / 溥儀 |
Research Abstract |
20年度最大の成果は、中国・遼寧省档案館で史料調査を行い、張作霖と溥儀の実家(醇親王家)とが交わした文書群を発見したことである。19年度に、「満洲国」関連中国人戦犯4人の伝記を含む著作『「漢奸」と英雄の満洲』(講談社選書メチエ,全194頁)を発表したが溥儀への言及は不充分であった。今回の発見は、旧清朝統治者・満洲族としての溥儀と、民国統治者・張作霖が、同郷人として強い結びつきを保っていたことを示す。内容的には、醇親王家が北陵周辺の所有地売却を張作霖に任せていたこと、また民国政府から清室優待歳費の支払いが滞り、あるいは不足したため、張に借金を申し入れたり資金提供を依頼していたことなどがわかるものである。従来、溥儀の「満洲国」入りについては復辟願望が大きな原因とされてきたが、民国成立以降の生活困窮と、パトロンであった張作霖の死(1928年)という経済生活上の問題を加味して検討し直す必要が出てきた。張作霖政権期(1916-28年)にまでさかのぼって戦犯問題を分析するという新たな切り口から今後は展開していきたい。
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Research Products
(2 results)