2008 Fiscal Year Annual Research Report
上海のユダヤ人難民社会の人的構成及び共同体としての存在様態に関する研究
Project/Area Number |
19520603
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 吉雄 Kyushu University, 大学院・言語文化研究院, 教授 (70231975)
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Keywords | 上海 / ユダヤ人 / 難民 |
Research Abstract |
本研究計画は1938年〜1951年に上海に存在したユダヤ人難民社会の構成およびその特徴を各種資料の収集分析により明らかにしようとするものである。 平成20年度は本研究計画の2年目であり、平成19年度に行なった研究・調査の発展継続として、以下の活動を行なった。 1)平成19年度に外交資料館で収集した資料を基に、1943年3月に出されたユダヤ人ゲットー設置による影響を検討した。その結果、当時上海にいたユダヤ人難民は1万5342人であったこと、そして居住・就業の場所をそれまでの上海租界全域から蘇州河以北の約2平方kmに制限するユダヤ人ゲットー設置の布告により、移動を余儀なくされた難民は7352人だったこと、また彼らがそれまで営んでいた職業などが判明した。 2)平成19年度に外交資料館で収集した資料を基に、駐リトアニア副領事の杉原千畝がビザを与えたユダヤ人について「資料調査:上海のユダヤ人難民の観点から見た杉原リスト」(2008年2月)を執筆したが、今年度はそれを発展させ、上海へ逃れたポーランド系ユダヤ人難民の年齢・性別・職業構成等の調査分析を行なった。ポーランドからの難民はユダヤ教の神学校の学生や教師が約3分の1を占めていたため、上海の他のユダヤ人難民集団と比べ平均年齢が若く、また男性の割合が一層大きかった。彼らは上海のユダヤ人難民社会の中では10%に満たない少数派だったが、難民子弟にユダヤ教・ヘブライ語の教育を行なうなど、ユダヤ人としてのアイデンティティの確立に大きな影響を与えた。 3)本研究計画の枠内で作成した1939年11月時点の上海ユダヤ人難民住所録のデータベース(5458人分)を中国の猶太難民在上海記念館に提供し、同記念館が現在実施中の難民データベース構築に貢献した。またかつての上海ユダヤ人難民の記録の整理・出版準備中のアメリカに住む遺族からの依頼に応じ、情報を提供した。
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Research Products
(2 results)