2009 Fiscal Year Annual Research Report
中国反日運動と歴史継承的現地構造との連関実態の解明:中国東北地域を事例として
Project/Area Number |
19520609
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
松重 充浩 Nihon University, 文理学部, 教授 (00275380)
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Keywords | 満洲 / 中国近代史 / 日中関係史 / 大連 / 営口 / 絵葉書 / デジタルアーカイブ / ハルビン |
Research Abstract |
本年度は、昨年度迄に獲得した諸成果を前提に、主に以下の二つの研究実績を獲得できた。 1.中国東北地域における在地有力者層の対日行動に際しての特徴摘出: 中国東北地域における在地有力者層の対日行動が如何なる現実的基盤を前提に如何なる理路により展開していたのかの追究は本研究の重要な課題である。本年度は、この点に関し、営口と大連を事例に検討を行い、(1)自らの経済的利益が対日関係や対モンゴル関係を前提として重層的に形成されている在地有力者層にとって、自らが依拠し得る政治権力は時々の状況に即して日中間でオルターナティブなものとなっており、(2)それ故、現地中国側政治権力は、対外チャンネルの独占化と対地域内利害の強権的調整を首尾良く遂行することで支配の正当性を確保せざるを得なく、(3)その一つの方法として観念的であるが故に有無を言わせぬパワーを持ち得る中国ナショナリズムへの親和性をしめすこととなり、(4)第一次世界大戦後の国際環境の変化は中国ナショナリズムの伸張に一定の有利な環境を提供することとなっていた、という諸点を確認することができた。この成果は、いずれも従来の実証的研究の空白を埋めると同時に、中国東北地域の反日運動が現地社会の重層的構造と連関して展開するものであることを示す事例を提示するものとなっている。 2.公開シンポジウムと展示会の開催: 本年度は、本年度迄の研究成果を総括し、研究が十分展開できなかった中国ナショナリズムそれ自体の位置付けについて公開国際シンポジウム「蒋介石研究の展望:資料と課題」(2009年11月29日、於日本大学文理学部百周年記念館国際会議場)を開催し、必要な知見の獲得を図った。また、本研究において収集・整理し、その歴史的位置付けを行った諸資料を、展示会「写された満洲」(2009年10月6~17日、於日本大学文理学部資料館)で公開し、研究成果の対外発信も行った。
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