2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19520617
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
安井 もゆる Iwate University, 教育学部, 准教授 (70241502)
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Keywords | 西洋史 / 古代ローマ |
Research Abstract |
本年度はまず、共和政期から帝政前期にかけての、貴族家門の養子縁組の実例を拾い上げる作業を行った。その結果、共和政期に関しては30例程度、帝政前期に関しては60例程度をリストアップすることができたが、各事例のあり方から、次のような予期しない事実が明らかとなった。すなわち、帝政前期の諸事例のうち、本来の意味の養子縁組(adoptio)はごく一部であり、しかも大半がアウグストウス期に属する。一方、残りの多く、とりわけティベリウス期以降のほとんどは、「名乗りの条件(condicio nominis ferendi)」の相続、つまり被相続人の名前の継承を条件とした相続らしいということである。共和政期から帝政期のごく当初までは通常の養子縁組が支配的であったが、以後それは急速に忌避されるようになり、代わって外見は類似するが、本質においてまったく異なる「名乗りの条件」の相続が優勢となったようである。 帝政期において、歴代皇帝たちは通常の養子縁組、その他の貴族家門は「名乗りの条件」の相続を中心に行う、いとう傾向が見られる。もっとも、「名乗りの条件」の相続の歴史を遡ると、それは共和政末期にはすでにかなりの広まりを見せたことが確認される。したがって如上の現象は、共和政から帝政へという政治体制の転換以外の要素により引き起こされたと考えられる。 従来の研究は、帝政期の養子制といえば皇帝が考察対象であり、一般の貴族家門の場合の検証は不十分であった。以上の成果は、共和政末期から帝政初めにかけての、上層身分における社会変容を知る、一つの手がかりを与えてくれるものと予期される。
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Research Products
(3 results)