2008 Fiscal Year Annual Research Report
宗教弾圧がネップ体制成立に及ぼした影響に関する研究
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19520624
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
梶川 伸一 Kanazawa University, 歴史言語文化学系, 教授 (50194733)
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Keywords | ネップ / レーニン / トロツキー / 党中央委政治局 / 教会弾圧 / チェー・カー |
Research Abstract |
通説によれば、戦時共産主義とネップは対比的概念として解釈され、前者は軍事的抑圧体制を特徴とする。ネップ直前に赤軍は動員解除され、ネップ期において確かに軍事力の行使は減退したように思える。だが、実際にネップ期にあって重要な軍事抑圧機関として機能したのは、チェー・カーである。おもに農民から徴募される国民皆兵の原則に基づく赤軍には質的な問題が当初から指摘され、それに替わる専門的司法警察であるチェー・カーが新たな軍事抑圧機関として、新たに編成されるのがネップ期の特徴である。 またこのような国民皆兵の原則の放棄は、民衆権力の行政立法機能を担ってきたソヴェト機関の有名無実化、換言すれば、共産党中央委政治局への政治権力の集中と同時並行的に生じたことは興味深い。そしてこれは、政策立案過程で、機密、厳秘、極秘文書が多くなることも大きな特徴である。 そして、21年末から始まるロシア正教会への弾圧は、書面上はソヴェト議長カリーニンの署名になるとしても、実質的にはレーニンとトロツキーとの機密書簡のやりとりで、その方針が決定されるという、まさに「スターリン政治体制」の先取りが見られるのである。 教会弾圧の個々の具体的やり方だけでなく、政治構造自身がレーニン時代で大きく変質したのであり、この点からもネップの再検討が必要と思われる。
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Research Products
(1 results)