2008 Fiscal Year Annual Research Report
リーウィウスとローマ共和政期における伝承および歴史記述の研究
Project/Area Number |
19520632
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
毛利 晶 Kobe University, 人文学研究科, 教授 (60174330)
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Keywords | 西洋古代史 / 西洋古典学 / 考古学 |
Research Abstract |
1.マールクス・フーリウス・カミッルスは前5世紀末から前4世紀の前半に活躍したローマの政治家(将軍)で、恐らくは実在の人物である。しかしティトゥス・リーウィウスをはじめとする後代の歴史家の記述はカミッルスを理想化し、彼が生きた時代の歴史は、彼の活動を中心にして再構成されているらしい。この伝承の再構成の課程を、それが行われたと考えられる時代(共和政末期から帝政初期)の政治的・文化的状況との関係で考察し、これらの状況が与えた影響を明らかにすることが本研究の課題の一つである。今年度は、カミッルス伝説の中で工トルーリア人都市ウェイイーの陥落、カミッルスの白馬を用いた凱旋式、カミッルス裁判、カミッルスの亡命と復権などの要素を中心に、リーウィウスと平行史料の記述を比較検討した。伝説におけるこれらの要素は、特にカエサルの独裁という共和政末期の政治状況との関係で研究史上盛んに議論されており、先行研究の検証にも力を注いだ。なお研究成果の一部は、2008年度後期の特殊講義を通して学生にも紹介した。 2.2008年8月25日から9月6日までローマ(イタリア)とミュンヘン(ドイツ)に滞在。ローマではブリティッシュ・スクールの図書室、ミュンヘンではバイエルン国立図書館およびドイツ考古学研究所古代史・碑文学委員会の図書室で、碑文史料と古代末期の歴史家の作品を中心に、日本では入手が困難な文献を収集した。 3.本研究にとって基本史料の一つであるリウィウス著『ローマ建国以来の歴史』に関して、第2ペンターデ(第6〜10巻)前半部分の翻訳を完成し、京都大学学術出版会から出版した。
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